2009年07月28日

【書評】責任に時効なし−某巨額粉飾企業の歴史を記す名著−

先日より積んでいた本を一気に読破してみました。
その本は「責任に時効なし−小説巨額粉飾−」と言うタイトルでカネボウ元常務取締役財務担当役員であった嶋田氏が書いた本です。

この本は一応フィクションとして書かれておりますが、著者が元カネボウの役員であったことやこの本に登場する企業らがどこかでみたことあるような・・・みたいな企業名で登場することからも、ほぼノンフィクションと言っても過言では無いかと思われます。

まぁ敢えてあらすじをお話しすると、トウボウという化粧品・食品も提供する巨大紡績企業グループの粉飾と破綻の道筋を描いた著書となっております。

正直、財務担当役員である番匠さんを美化してしまっている部分はありますが、その粉飾を行っていた手法・会議で行われていた話というのは現実にありそうな話な訳でして(恐らく現実だったと思いますが)、その転落の道筋を読み解くには非常に面白いです。

特に、金融機関と再生と言いつつ己の利得を目論む魑魅魍魎の集まりの下りは見ておくことを推奨します。企業が大きくなりすぎると潰せないと良く言われておりますが、その大きくなりすぎた企業を潰せないジレンマなども良く表現されております。
また、再生を目指すといいながら己の利得を追求する集団の欲深さも垣間見えます。大体、再生するんだと偉そうにのた打ち回っている企業や団体は多いのですが、再生することによって得られる利益が欲しいから再生を目指させる訳であって、決して慈善事業でやっている訳では無いことが伝わってきます。

粉飾の手順もわかりやすい(まぁ複雑になりすぎているせいで判らない部分も多々ありますが・・・)。悪質な連結外しや売上の架空計上の道筋、それを財務のみならず監査法人にも圧力をかけて数字を作ろうとする経営トップの凄みも伝わってまいります。

良くあるのが、財務役員=経営ではないと社内的に思われるケースって多いのですが、やはりこのトウボウも例外では無く、その辺のジレンマも伝わってきますし、結果的にトップにやり込められて財務役員が粉飾理解の数字で発表してしまう過程も出ております。

番匠常務は、この小説の中で検事に対して

「検事さん、”黙示の許諾を与えた者”と身体を張って抵抗した者”といったいどちらの罪が重いのですか。粉飾に無抵抗、否、消極的な協力までして、しかもそれに黙示の許諾を与えた役員を咎めないで、なぜに粉飾に抵抗、反対した財務経理の人間だけを拘束するのですか?それとも抵抗しても財務経理なら粉飾が生じるとすべて悪人になるのですか」

「粉飾指示に強く反発、抵抗して、しかしそれでも経営トップから強要、いわば強姦され、最後には仕方なしにのまされた。それで罪に問われるならば、経理の人間には会社を辞めるしか道が残されていないということですか!」

と問い詰めるシーンがあります。この部分には納得できる部分と納得できない部分があります。

確かに財務経理の人間というのは立場が弱く、経営トップが数字を作れと言われると抗うことが出来ず、数字の作り方を考えるケースが多々あります。むしろこの方が多いだろうと。それだけに、経理の人間が正義を貫くことの難しさは理解できます。

しかし、会社を辞めるしか道が残されていないのか!というのはそのとおりとしか言いようがありません。僕ならばここまでの決算を開示しろと言われたら、仕事が出来ないかも知れません。でもここまで追い込まれたら絶対できないという正義感を貫くようなこともいえないかなぁ。。。いずれにしても当事者じゃなきゃ判らないね。これは。

しかし、番匠さんも悪事に手を染めたという事実はゆるぎない真実であり、また役員であるならば、その粉飾に対する開示等も検討しないと本当はいけないのではないかと。そういう意味では少し美化しすぎたとも思っております。勢いとやろうとした努力は理解できても、結局のところその道筋を断ち切れなかったのは常務取締役としてどうなのよと。

まぁ・・・。それだけトウボウは粉飾が常態化していて、その粉飾が悪いと思っていた人間が少なかったのかと思います。つか、本当にこれが真実ならどこまでも腐っているダメ会社だったということです。
何が怖いって、悪事を悪事と思ってない人間の集合体だってことです。
まぁ遅かれ早かれ崩壊していたでしょうね。

実は、僕自身はトウボウ(と思わしき会社)の粉飾性はある程度予見しておりました。その理由としては繰延税金資産が過大計上されており、それが無ければ債務超過なのは間違いない期がありましたから。残念なことに過去の財務諸表が消えうせているのでここで具体的な数値を描くことは出来ないのですが、繰延税金資産を除くと債務超過になっていたのです。
確か繰延税金資産は欠損金の回収可能性があることから計上したものかと思いましたが、この状況で回収可能性があると書いていること自体アウトだった訳です。それ以外にも棚卸資産の資産性や連結子会社の異動の激しさなど胡散臭さはテンコ盛りだったかと記憶しております。

因みに、某大手監査法人のセミナーでもトウボウ(と思わしき会社)は粉飾をしている!と7年くらい前に仰っておりました。おいおい大丈夫か?と思っておりましたが結果正解でしたね。

いずれにしても、トウボウ(と思わしき会社)の粉飾事件は監査法人のあり方も含めて、会計や監査を学ばれる方には欠かせない話なので、監査論とかの教科書で学ぶだけではなく、企業側のジレンマを理解する上で読まれてみたらいかがでしょうか。

つーか、写真見たけど、嶋田さん格好いいな。
これなら小説のようなロマンスがあったとしてもおかしくないかと(ぇ
一応ロマンスはフィクションらしいですが・・・。

責任に時効なし―小説 巨額粉飾

責任に時効なし―小説 巨額粉飾

  • 作者: 嶋田 賢三郎
  • 出版社/メーカー: アートデイズ
  • 発売日: 2008/10
  • メディア: 単行本




カネボウ凋落―「日本的経営」の終焉

カネボウ凋落―「日本的経営」の終焉

  • 作者: 山川 猛
  • 出版社/メーカー: 文理閣
  • 発売日: 2006/07
  • メディア: 単行本



posted by アルジャーノン at 12:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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